ベストマリアージュ
手のひらで顔を覆いながら、私はごめんなさいと頭を下げた。


涙があとからあとから流れ出て、指先を濡らしていく。


するとずっと私の側に腰かけて話していたさとしが、ふいに立ち上がる気配がして私の体はピクッと震えた。


もうさとしに嫌われてしまったんじゃないかと思うと怖くてたまらない。


だけど予想に反して、少し離れた場所からさとしの静かな声が響いた。


「もういいよ……そんな謝るな

こんな風になりたくて、この部屋とったわけじゃねぇし、せっかくの誕生日なのに遅刻した俺も悪かったし」


その言葉を聞いて、ますます涙が止まらなくなる。


きっとさとしは本当はすごく怒ってるはずだ。


だけど私の誕生日を最悪の日にしないために譲歩してくれてるんだと思った。


「……ごめんなさい」


それでもそう言わずにはいられない。


自分がしてしまったことを棚にあげて、さとしにひどいことを言ってしまったんだから。


「だからもういいって

どうせあいつが俺に頼まれたとかなんとか言ったんだろ?

確かにムカつくけど、俺がちゃんと来てりゃそうならなかったわけだし

気にすんな」


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