ベストマリアージュ
「ねぇ、どうでもいいけどさ

服着てからにしなよ」


素っ裸でストールだけ巻いてるとか有り得ないんですけど。


するとさとしはニヤッと笑って勝ち誇ったように言い放った。


「いんだよ、またすぐ脱ぐんだから」


は?なに言って……


気づけばさとしが間近に迫ってて、ストールが私の目を塞ぐ。


「や……な、なに?んんっ……」


柔らかな感触が唇に触れたかと思うと、巻いていたシーツが取り除かれて素肌にさとしの指が這う。


見えないから余計に意識がそこに集中してしまって、私の体はビクンと跳ねた。


唇が離されても、出るのは吐息ばかりで文句も言えない。


さっきの言葉が頭をよぎった。


『別に失敗したわけじゃねぇし』


その言葉の意味をいまさらながらに噛み締める。


結婚するんだから当然だろ?とでも言うようなさとしの言葉。


幸せ過ぎて怖いくらいだ。


「さとし……私、いい奥さんになるからね?」



そう呟くと、さとしの手がピタッと止まる。


それから目を覆っていたストールを取ると、いつもの意地悪な笑顔で答えた。


「無理すんなって

お前はそのままでいればいいから」


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