ベストマリアージュ
「あのさ、お客さんにもそんな態度?

クレーム来るよ、そんなんじゃ」


「うるせ!客には営業スマイルに決まってんだろ?

金も払わねぇお前なんかに笑顔振り撒いたら、もったいねぇからだよ!」


げっ、なんでこうなっちゃうのかな?


そんなに怒るんなら、自分が切るとか言わなきゃいいのに……


私はさとしが何を考えているのか、さっぱりわからなかった。


これ以上なにか言うと、また更に機嫌を損ねそうなので、仕方なく口をつぐむ。


大人しくなった私を見て満足したのか、さとしの手がスルリと私の髪をすいた。


霧吹きみたいので髪が濡らされていく。


それからハサミを取り出すと、丁寧に髪を切り出した。


鏡ごしに見る仕事モードになったさとしは、少しだけかっこよく見える。


なんだか恥ずかしくなって、私はそっと目を閉じた。


人に髪を触られるのって、意外と気持ちいいもんだな……


目を閉じたまま、身を任せていると、髪を切ってるのがさとしだと忘れてしまいそうになる。


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