温め直したら、甘くなりました

今目の前にいるいかにも不健康そうなメガネ男は、私の夫、二階堂集(にかいどうしゅう)

職業は、小説家だ。



「集は難しく物事を考えすぎなのよ。それか、疲れてる?ちゃんと寝てるの?」


「睡眠不足はいつものことだ。別に難しく考えているわけでもない。茜、俺たちが最後に一緒に寝たのはいつだ?」


「一緒に……?」



それはただ一緒のベッドで眠ったという意味だろうか。

それとも抱き合った時のこと?


でも、どちらにしろ……



「……覚えてない」


「だろうな、俺もだ。最近は一日に一度も顔を合わせないことだってある。……こんなの、夫婦って言えると思うか?」



私は集の仕事の邪魔をしない。

そして集も、私がこの小料理屋『茜』を一人で切り盛りすることに関して口を出さない。

結婚するときに、お互い約束したことだ。


だけど確かに言われてみれば、こんなすれちがいばかりの生活では結婚しているという実感はない。

忙しさにかまけて、考えないようにしていたけれど――……

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