温め直したら、甘くなりました
茜が店を閉めるのは23時。
日付が変わった頃に帰ってくるのだろうと予想をして、俺はキッチンに立っていた。
料理なんてしたことはない。
カップ麺に湯を注ぐ、パンをトーストする、レトルトカレーを温める……それくらいはできると言ったら、そんなの料理とは言わないと安西に叱られた。
でも、茜の気持ちをもう一度俺のものにするためなら何だってするさ。
そう、カップ麺より手間のかかる、即席麺を作ることなんて、どうってことない。
「鍋はどこだ」
「箸がない」
「丼は一体……」
食器棚をひっくり返すようにしてそれらを探し、ようやく麺を茹で始めたところに茜が帰ってきた。
店に立つ凛とした着物姿とは違う、ジーンズにパーカー、そして疲れた顔がセクシーだ。
「おかえり、茜」
「だだいま……って、何やってるの?」
「見れば解るだろう、ラーメンを作っている」