温め直したら、甘くなりました
「……これ、何分茹でたの」
茜がそう言って、鍋を覗き込む。
「時間は見てない。ただ俺好みの固さになるのを待っているだけだ」
「俺好みって……あなたは赤ちゃんか老人?とにかくもう火を消して。量もこんなに増えちゃって……」
いつも仕事をしながら啜るラーメンは、のびて柔らかい。それに慣れているのだから仕方がないじゃないか。
それを赤ちゃんか老人とは、なんて言い草だ。……と、反論しようとする暇もなかった。
どけ、と言わんばかりの力で茜は俺をコンロの前から押し出し、鍋に粉末スープを手早く入れると完成したラーメンを丼に盛り付けた。
「責任持って、増えた分は集が食べてよね」
「あ、ああ」
手渡された丼はずっしり重い。
そして、山盛りの麺のせいでスープが見えない。
茜の方はいたって普通の一人前なのに……