温め直したら、甘くなりました

その後、会話は私の願いどおりに別の話題に転んだ。

ジャガイモは、捨てた。(ごめんなさい、八百屋さんと農家の方)

でも、転んだ先の話題も決して安全なものではなかった。



「――茜ちゃんの、ファーストキスは何歳?」



酔いのまわったおじさま達は、ときどきこんな話を私に振るから困る。

もちろん、笑顔でかわすのにも慣れてはいるけれど。



「ええ?もう忘れちゃいましたよ、そんなの」


「またまたぁ、高校か、中学かくらいは覚えてるだろ?」


「……茜。その話、俺も気になる」



包丁を取り上げられてやることがなくなった集までもが、ずいっと私の顔を覗き込んで来た。

その空気の読めなさには、呆れて怒る気もしない。



「……中学、三年生だったかな」



ぼんやり思い出した風を装って、呟く。

……それ以外は突っ込まないでよね、この話はこれで終わり。



「グラスが空だわ。お代わり、なんにします?」



私は空気を変えるように、お客さんに注文を聞く。



「あ、俺はそろそろ燗にしてもらおうかな」


「こっちも、お願い」


「はーい」



……けれど空気を変えたって、読めない人には意味がないのだ。



「――茜っ!!その相手は一体誰なんだ!!」

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