温め直したら、甘くなりました

――閉店後、結局私は集にファーストキスの詳細を説明する羽目になってしまった。



「で、相手は?」


「……幼なじみよ、ここに野菜を持ってきてくれる八百屋の店主。」


「なに!?今でも付き合いがあるのか!」


「だって昔から助け合ってきた仲だもの。同い年でこの町に残ってるのも、私と彼くらいなものだし……
付き合いって言ったって、別に今キスするわけでもないしいいじゃない」


「それは、そう、だけど……」



最初は勢いがあるくせに、すぐにしゅんとするのは集の可愛いところだと思う。

なんていうか、もっといじめたくなる、みたいな。



「そんなに嫌なら、その記憶を塗り替えるくらいのキスを私に頂戴?
ファーストキスの思い出なんて、吹き飛んじゃうくらいの」



ときどき、こんな風にキスを求めたくなるのは、一度は好きになった人だからだろうか。

干からびた恋は元に戻らないって、誰か言ってなかったっけ?

……あ、私か。

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