怖がりな兎さんとからかう狼さん
「暴れるな、また落ちるぞ」

 抱えられている間、忘れなきゃいけないと思い続けていた。
 少し休憩してから着替えを済ませて、自動販売機のジュースを飲んでいた。

「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。まさか落ちるとは思いませんでした」
「怪我はないな?」
「はい」
「ご飯を食べに行くか?」
「はい」
「さっきからお前、同じことしか言っていない」

 正直あんまり大丈夫ではない。あのときの恐怖を思い出したから。

「えっと、さっきのことがまだ少し怖くて・・・・・・」

 もう彼らと会うことはないだろうと思うが、可能性はゼロではない。
 私を抱きしめようとしたのか、腕が動いたのが見えて、ビクッと体が震えた。それを見ていた先輩はそれ以上は何もせず、ただじっとしていた。

「お腹が空きました。ご飯、食べに行きましょう」

 自分でも不自然な笑顔をしているのがわかる。一瞬、先輩は顔を歪めてから立ち上がった。私もつられるように立ち、そのまま飲食店へ行った。
 そのあとはそのまま帰ることにした。
 家に着くと、そのまままっすぐに自分の部屋に入り、ベッドに横になった。

「今日、悪いことをしちゃった・・・・・・」

 雰囲気を一気に思い状態にしてしまった。だからといって、過去のことを話す勇気なんてない。
 私が急に態度を変えても、怒るどころか心配してくれた。
 御礼と謝罪を心の中で先輩に言った。
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