怖がりな兎さんとからかう狼さん
 慌てて距離を置こうとしたが、先輩は髪を持ったままなので、引っ張る形となってしまった。

「いたたっ!」
「お前、何一人で遊んでいるんだ?」
「いつまで持っているんですか!」
「嫌いじゃないから」

 いや、私の髪のにおいが好みだからといって、こんなことを続けられると、非常に困ります。

「あ、そうだ。久々に作ってもらおうか」

 何を作って欲しいのか、なんとなく想像がついた。

「お前の手作り弁当」

 予感が見事に的中した。

「あれ?驚かないな」
「言うと思っていましたから」
「俺が言わなくても、作ってくれればいいのに・・・・・・」

 あの、私達は恋人ではないのだから。

「自ら作るわけありません」
「だろうな。男自体に未だに恐怖を抱いているだろう?」
「はい」
「いったい何がお前をそこまで追いつめたんだろうな」

 そんなことを言えるわけない。言いたくなんかない。
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