月下の誓約


 思わずかけ寄り、後ろから抱きついた。

 和成は立ち止まって、静かに問いかける。


「また、泣いていらっしゃるのですか?」


 紗也は首を振ってつぶやいた。


「和成。いなくなっちゃやだ」
「一時間したら戻ってきますよ。ちゃんとヒゲ剃って」
「ちがうの! 私が絶対助けるからね」
「私情で行動なさってはなりません。と申し上げたでしょう?」
「だって、右近にもお願いされたし」
「右近が? いつ……」


 少し考えて和成はふと思い出した。
 ゆうべ砦に戻ってきた時、立ち去り際に右近は紗也に言った。


「和成の事、よろしくお願いします」


 妙な挨拶をすると思ったらそういう意味だったのか、と謎が解けた。

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