月下の誓約


 和成は破顔一笑、紗也を抱き寄せた。
 そして、ゆっくりと顔を近づける。

 驚いて見開かれた紗也の瞳が閉じられると、今度は深く口づけた。

 この口づけは決意の証。
 もう迷わない。
 後には退かない。
 誰に何を言われようとも決して紗也を手放さない。

 長い口づけの後、和成は紗也を見つめて宣誓した。


「誓います。私はあなたとあなたの国を一生お守りいたします」


 うるんだ瞳で和成を見つめ返し、紗也は微笑む。


「私の全部を和成にあげる」
「喜んで、拝受いたします」


 和成は笑って紗也を抱きしめると、再び口づけた。

 一陣の風が桜の枝をざわりと揺らし、薄桃色の花びらを月夜の空に舞い上げる。

 ”戦が終わったらなどと言う者は、戦で命を落とす”そんな戦場の言い伝えが、和成の脳裏をかすめた。

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