月下の誓約

 8.忍び寄る悪夢



 昼前に和成たち後方支援部隊は東方砦に到着した。
 砦の警備部隊に出迎えられ、すぐさま情報処理部隊と共に中央司令所へ向かう。

 司令所で紗也と共に挨拶をし、斥候と前線部隊の報告を待って昼過ぎに紗也の合図で開戦した。

 三時間くらい経過した頃、刻一刻と移り変わる巨大な戦況図を眺めながら誰にともなく和成がつぶやく。


「なんか、おかしい……」


 杉森軍の五倍はある兵力を有する同盟軍が、退きはしないものの攻め込んでも来ないのだ。
 何か重要な作戦のために機会を窺って時間稼ぎをしているように思えてならない。

 和成は情報処理部隊長に問いかけた。


「隊長。何か不穏な動きがあるとか、報告は入っていませんか?」
「いいえ、通常の戦況報告しか見受けられませんが……。どうだ?」


 隊長は自分の前にある端末機の画面を確認した後、隣の兵士に尋ねる。

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