【完】うしろの席のオオカミさん
しょうがないじゃん。
聞こえなかったんだから!
「あー!桃子!」
凛とした声が耳に届いた。
お姉ちゃんは声の主に向かって手を振っている。
あ、やばい!
お母さんたち見失っちゃったよ!
「日向子ちゃん、こんばんは!」
「へ……?」
マスクしてて誰だか分からなかったけど、よーく見てみると……
「梨菜さん!」
「久しぶり日向子ちゃーんっ」
ぎゅっと抱きつかれ一歩後ろによろめいた。
外れそうになっていた耳当てがその拍子に地面に落ちてしまった。