神様が泣いたあと
俺の好きな人は口に出してはいけない。
みんなと同じように誰かに教えたりもしてはいけない。
近寄ってもいけない。
ただ遠くからみてるだけ。
そういう暗黙のルールを覚えた。
だから、哲と出会ったときは焦った。
もう絶対に誰かの傍にいることはしないと想っていたのに
『なぁ、名前なんていうの?』
いつも哲は1人の俺に話しかけてきて
『弁当一緒に食おうぜ』
他愛のない話をしてくれて
『お前、綺麗な顔してるなー』
無愛想な俺に懲りもせずに近付いてきてくれて
『翼ー!』
名前を呼んでくれて
『ハハハ!』
隣で笑ってくれて
俺は感じたことのない暖かさが怖くて、怖くて。
それでも一緒にいたいって思った。
この暖かな温もりにもっと触れていたいと思った。
だけど口にしてしまえば哲もあのときみたいに放れてしまうかもしれないから、それだけは絶対に嫌だから
絶対この想いは口にしないと決めた。