【続】隣の家の四兄弟

ぎゅうっと抱きしめるようにしながら、ゆっくりとそう口にした。
ぼくの胸にすっぽりとおさまる小柄なミカは、ぼくの肩に顔を預けたままなにも発さない。

その沈黙が、ここ最近ない緊張感をぼくに与えたみたいで。
ミカと触れてる部分がものすごく熱く感じ、鼓動もバクバクと騒いでる。

さらりとした髪が、ぼくの頬をくすぐる。
その香りがますますぼくの高揚した気持ちを助長させてしまう。


……ねぇ、今、どんな顔してる?
もちろん、簡単に「OK」だなんて返事が聞けるなんて思ってない。
そんな女性だったら、ぼくもこんなふうに好きになったりしてないと思うから。

でも。
ぼくの気持ちを聞いたミカは、少しは意識して、戸惑ってくれたりしてる?
その顔が、みたい。


変わらずなにも言わないミカを、ぼくはそっと引き離すと、至近距離のまま顔を覗き込んだ。
ぼくの目に飛び込んできたミカは、想像以上の顔をしていた。

顔を真っ赤に染めて、黒い目を大きくさせて。
ぽかんと小さく開いたままの口と、力なく下がった眉。

その表情は、ぼくの自惚れた考えじゃなくても、かなり意識してくれてる女の子の顔だ。


聖二にしかみせないような顔。
それを今、ぼくの前で見せてくれてる。

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