【続】隣の家の四兄弟

お父さんが出て行った玄関の方を見ていたら、チハルは私の向かいのソファに座った。


「イツキ、面白いね」


『イツキ』って…お父さんの名前なのはわかるけど、私と同じくらいのこの人が呼び捨てってなんかヘンな感じ…。

まぁでも外国ではそれが普通だったりするのかな?


「…面白い…って言うのか…」


なんなのか…。
肉親の私からしたら、単純に面白いだなんて楽しめない。


「…あの、本当にずっとここにいるんですか…?」
「Si! 隣が幼馴染みならなおさら!」
「あ…そう、ですか…」


そうだよなぁ。
隣が幼馴染みだったらなおさら、ここ出る理由がないよね。

いっそ綾瀬家に転がり込んじゃえばいいんじゃない⁈

あ…だめだ。

部屋……ただでさえ足りないんだった…。

聖二が浩一さんに部屋を譲って、居間で寝てるくらいなんだから。


「うーん……」
「Ha-ha!ミカも面白いね!」
「はっ?」


くしゃっと、目を細めて笑うチハル。

「面白い」って…喜ぶとこかわかんないけど、その白い歯を見せて笑う姿を見たらなんとなく、合わせて笑った方がいい気がした。

真正面から改めて向き合うと、やっぱりいわゆるイケメンだ。

…だけど。だけど、なんかそれだけじゃなくて……。

私は何かが引っ掛かる。


「Cosa e? (なに?)なんか顔についてる?」


あからさまに顔を見過ぎた私に、くすくすとまだ笑いながらチハルは聞いてきた。



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