【続】隣の家の四兄弟

「い、いや!ななななんでも、ないんですっ」


それ以上綺麗な顔して見ないで!

私は何か引っかかることを一瞬で忘れ、両手をぶんぶん振ってそう言うと、チハルがクスリと笑って私の手首を握った。


「ウソ。ミカ、ウソ下手だね」


そして前傾姿勢からの上目遣いで、ニヤリとチハルは言う。

確かにウソとかつけないんだけど!

こんな、出逢ってまだ数十分の相手にすら見透かされるなんて…!

しかも、この無言の圧力っていうのか…顔立ちが綺麗だと、余計に迫力があるって本当なんだ。

だけど、そんなことを鼻にかけるでもなく。
嫌味のない少年のような爽やかな笑顔と、まるで前からの知り合いのような接し方に好感さえ覚える。


「…犬みたい…」


つい口から出た言葉にハッとして両手で口を覆う。

でももう遅い―――。


「あっ…あの、違っ!い、犬みたいに人懐っこくて、可愛い雰囲気とかって意味で、その…!」


それは本当にそう思ったことだけど、いきなり「犬みたい」なんて失礼だったかも、と慌ててフォローするけどそれすらもなんか逆効果な気がする。

それでもやっぱり取り消すことも、巻き戻すことも出来るわけなくて、恐る恐るチハルの顔色を窺った。


チハルは何にも言わずに腕を組んで少し俯いた気がした。


お、怒らせちゃった…?

ああ、もう私のバカ!
なんでいっつも勝手に口に出しちゃうの!

未だに信じられないけど、チハルと一緒にこの家で生活するって言われた初っ端に自分で居心地悪くしちゃったじゃない!


少し前の自分を責めて、悶絶する。





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