【続】隣の家の四兄弟

「チハルって……双子?」
「は? いきなり何言ってるのーミカ!」


けらけらと笑うチハルだけど、私は結構本気。

あまりに目の前のチハルと表情が別人過ぎて、一卵性の双子とかなのかと思ったんだもん!


「ぼくは双子じゃないヨ。アキラはいるけど」
「アキラ?」
「んーと、ぼくの家族……そういうの、日本でなんて言うんだっけなー」
「兄弟?」
「あ、それかなー」


私が持ってた雑誌をひょいと抜き取って、チハルはそれを閉じて棚に戻す。

そしてそのまま楽しそうにチハルは店内をぐるりと見て回る。

すらりとした体型に、猫っ毛ぽい、色素の薄い髪。
足も長くて、よく見たら……チハルって何等身? ってくらい顔が小さい。

そんな後ろ姿をみて私は想像する。


チハルの兄弟かぁー……。

お兄さんかな?それとも弟?

どっちにしてもきっとチハルに似てたらかっこいいんだろうなぁ。


「いいなぁ……」
「なにが?」
「ひゃ!」


私の前を歩いていたはずのチハルの顔が、ずいっと目の前に現れる。
思わず声と肩を上げて驚いた私を、チハルはそのままの距離でくすくすと笑ってた。


「ミカ、面白い」
「そんなこと、何回も言われたって嬉しくない!」
「そう?あ、なにが『いいな』?」
「え?あー……兄弟。私一人っ子だから。ね、チハルのそのアキラっていくつなの?」
「アキラ?ぼくのふたつ下」


下かぁ! ふたつ下ってことは……私よりは歳上?
チハルの弟かぁ。可愛い顔してるんだろうなぁ。


「見てみたいなぁ。チハルの弟」
「そう? じゃあ言っとくよー」
「え? そんなわざわざ!」


こんな、ただの同居人が“興味本位から会いたい”という理由で、もし本当にイタリアから来てもらったりしたら申し訳なさすぎる!


私は片手を顔の前でぶんぶんと振ると、チハルは首を傾げた。






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