【続】隣の家の四兄弟
「え? ほんとに? 今から?!」
私とチハルは用事も終わってマンションへと戻っていた。
その時に、チハルが突然言い出した。
『コウたちのとこに行こう』と。
「ダイジョーブだよーきっと」
「いや、うん。でも……連絡くらい入れた方が……」
軽やかな足取りで前を歩くチハル。
そして明るく答える。
「んー。ミカが言うならそうする。あ! こっちの携帯買ったし、これで電話したい! 番号教えて?」
『教えて』って、誰の?
自宅は知らないし……浩一さんでいいのかな?
「――はい」
私は自分の携帯の電話帳を表示してチハルに渡す。
チハルが2台の携帯と向き合っているときに、ふとコンビニに目が行った。
そこには雑誌が何冊か外に向けて陳列されている。
その中の一冊の女性雑誌に目が止まった。
――あ。これ、昨日孝四郎くんと本屋に行った時に途中まで見てたやつ――――あれ?
そこで私は何かを思い出しかけて、チハルに何も言わずにコンビニに入った。
「いらっしゃいませ」という店員の声がいい終わらないくらいの早さで、その雑誌を手に取ると、パラパラと私は“なにか”を探す。
そしてそのページを探し当てたのと同時にチハルが私を追って、コンビニに入ってきた。
「ああっ!!」
「なになに?! どーしたの?」
チハルが興味津々で私に駆け寄る。
その顔と、私は持ってる雑誌を高く掲げて見比べた。
「い、一緒……」
自分の手にしてる雑誌に載ってる人と、その奥に立つ、リアルな人間の顔が一緒……。
「あー。これ。この前ミラノで撮影したやつだ」
無邪気に私の横から雑誌を覗きこんでチハルは言う。
「こ、これか……」
私の記憶に引っかかってたのは。
どーりで昨日、チハルを見た時に初めてじゃない気がしたんだ。
「まぁまぁかっこいいデショ、ぼく」
「ま、まぁまぁ?」
この激近の隣でにこにこ笑うチハルは本当にさっきから思ってるように犬みたいで。
でもこの本の中のチハルはそれとは別人。
クールで無表情な男性は、大人っぽくかつ艶っぽい。