【続】隣の家の四兄弟

「どこに行くかと思ったら……」


あのあと、聖二にただついてきた。
どこになにをしにいくのかと、ちょっぴりどきどきとしていたのに。


「逆にどこ行くと思ってたわけ?」


聖二はそう言いながらニヤッと笑いながら、今買ったばかりのタバコのフィルムをピリッと開けた。


「べ、別にっ」


別に、どっかにドライブに行くとか、買い物に出掛けるとか……お茶するとか。
そんな期待、全く――――してなかった、わけでも、ない……。

それが現実には、マンション近くのコンビニだったわけで。


「……もう! タバコなんて、体に悪いんだからねっ」


私は精いっぱいの嫌味を聖二の背中にぶつける。

それでも、こうして二人で居られることだけでいいんだ。
心のどこかでそんな折り合いをつけようとしながら、足元の小石を軽く蹴る。


「ぶ!」


下ばっかりみて歩いていた私の鼻は、聖二の背中に押しつぶされた。


「ちょ、なに?! 鼻が痛いんですけどっ」
「それ以上低くなんないからいいだろ」
「ムカー! そういう問題じゃないっ! っつーかそこまで低くないもんっ……多分!」


聖二の手元をふと見ると、一度封を開けて取り出したタバコを、いつの間にか仕舞ってる。
首を傾げて聖二を見上げると、目を逸らされる。

視線をはぐらかされたのが面白くない私が口を開こうとしたら、聖二が背を向けたまま言った。


「……散歩でも行くか?」


せ、聖二が「散歩」って……。
いや、それよりも、そんなふうに私を誘ってくれるなんて!


「どーせ、チハルと孝四郎がやりあってうるせーだろうし。ま、イヤなら別に、」
「行くっ!」


ふたつ返事で答えると、聖二は肩越しにちらりと私を見る。
そして前を向いて肩を揺らして笑ってた。


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