製菓男子。
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家に帰ると姉が食卓で待っていた。
両親はすでに就寝したという。
パン屋の朝は早いから仕方がない。


姉の作った夕食を食べ、風呂に入り、自室へ戻る。
電気をつけると携帯電話が鳴った。
相手はツバサだったから、見計らっていたに違いない。
僕の家とツバサの家は隣同士で、商店街だからか隙間があまり空いていない。
部屋を暗くしているとツバサの部屋の電気がついたことが窓からくっきりわかる。
おそらく逆も同じだろう。


『ゼンくんおかえり』
「どうしたの、最近多い」
『制服のお礼、きちんと言ってない気がして』
「したでしょ。藤波さんに」
『まあ、一応ゼンくんにも。ありがとね。それと、来週もよろしくって』
「そっちが本題でしょ。またポルボロン?」
『うん、できれば』
「まだ叶わない?」
『制服は一応、受け取ってくれたんだけど、それが解決するかわからないから。まぁ、ぼくの独りよがりだし、リコも同じように思ってないから、叶わないだけかもしれないけど』


リコはツバサの片思い真っ最中の相手だ。
ツバサは健気にも十年以上思い続けている。


『よくこんなにも早く手に入ったね』
「自分のところで作れば、もっと早かったでしょ」
『そんなことあるわけないじゃないか』
「そうなの?」
『ぼくの着るロリータ服だって二週間くらいかかってるんだよ? それに制服まで頼んだら、ばーちゃん過労死しちゃう。そうじゃなくても歳なのに』


ツバサの家は洋裁店で、うちと同じように一階の一部が店舗になっている。
ただその洋裁店のシャッターは開くことはなく、営業はしていない。
ツバサの両親は外で働いていて、祖母がかつての店舗の中で、趣味で服を作っている。
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