製菓男子。
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昨日仕事を早く上がらせてもらったわたしは、兄の世話をするべく勤しんでいた。
家にある材料で栄養のあるものを作り、食べさせ、常備薬を飲ませる。
そんなことをしていたら、七時になった。


兄の息使いは荒いままだし、うなされているし―――冷蔵庫の食材が心もとないし、起きたときに好物がないと怒るし―――。


夜の外出もやはり学生以来していなかったのだけれど、手に爪が食い込まんとばかりの勇気を振り絞って買い物に行くことにした。
なにせわたしはこの間、宮崎さんと一緒だったけど、買い物ができるくらいに成長している。
きっとひとりでもできるはずだ。


たきぎに油を添えたくらいにめらめら燃えながらショッピンッグモールに徒歩で行った。
そんなわたしに思わぬ出会いが訪れた。
そのモール内にあるスーパーに行く途中にあった、雑貨店の前、ショーウインドーに飾られていた色とりどりの傘に目が奪われたのだ。
気負っためらめら炎の瞳が鎮火し、夜空の星のようなきらきら瞳になった。


そこでわたしは淡い水色の傘を買うことができた。
着いた時間が閉店間際だったことも、よかったのかも知れない。
そうでなかったら「買い物」という行為にド緊張して変質者風になってしまうわたしが、雑貨店という亜空間の中にさえいられなかったと思う。


買い終わり外へ出ると、わたしはやっと商品タグを見る余裕が出てきた。
この傘は“ペールアクア”という色だという。
なんだか「涙のような雨の色だなぁ」とぼんやり感じた。
そして、スーパーで用を済ませて帰った。


(これで宮崎さんの傘と肩を並べることができるなぁ)
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