製菓男子。
「その事故に俺の姉も巻き込まれて重症、幸いなことに一命は取り留めた。けれど一緒に祭りを楽しんでいた、俺の大すきだった人は、俺の隣で轢き殺されたんだ。目を離した一瞬のことだったよ。彼女と姉はりんご飴を買っていて、俺はそれを近くで待っていただけなんだ。そんな一瞬の違いで」
塩谷さんがわたしの肩をぎゅっと掴んだ。
その手が震えている。
あの日の宮前くんの母親のように、責められているような気がした。
(――――ごめんなさい)
塩谷さんがわたしと目をあわそうとしているけれど、顔を上げることはもちろんできなくて、涙が手のひらにぼたぼた落ちた。
「俺はそのときのこと、パニックになっていて覚えていないんだけど、病室で呼吸なく眠る彼女をたくさんの人が見守ってくれた。その中のひとりに、彼女の彼氏がいたんだ」
(彼氏? でも塩谷さんとつきあっていたんじゃ?)
びっくりして不意に上げた視線が、塩谷さんとぶつかった。
感情がつかめない笑い方だった。
喜怒哀楽すべてを表に出したような。
「その人の顔は覚えていないけど、彼女より年上で、彼女が大学を卒業したら結婚する約束をしていた―――と言っていた。その言葉が俺は、どうしても信じられなくて。彼女はチヅルちゃんみたいに、嘘がつける人じゃなかったし、ついたとしても、すぐに顔に出てしまう人でもあったし、器用な人じゃなかった。でも、その彼氏の中でも、彼女のご家族の中でも、彼女と俺の関係は生徒と先生で納まり切れるもので、それ以下でも、それ以上でもないように映っていた。祭りに行っていたのも、姉と一緒に行く約束をして、それに俺がついていったっていう軽い感じに思われてたし。姉はたまたまそのとき、会ってただけだったんだけどさ」
塩谷さんがわたしの肩をぎゅっと掴んだ。
その手が震えている。
あの日の宮前くんの母親のように、責められているような気がした。
(――――ごめんなさい)
塩谷さんがわたしと目をあわそうとしているけれど、顔を上げることはもちろんできなくて、涙が手のひらにぼたぼた落ちた。
「俺はそのときのこと、パニックになっていて覚えていないんだけど、病室で呼吸なく眠る彼女をたくさんの人が見守ってくれた。その中のひとりに、彼女の彼氏がいたんだ」
(彼氏? でも塩谷さんとつきあっていたんじゃ?)
びっくりして不意に上げた視線が、塩谷さんとぶつかった。
感情がつかめない笑い方だった。
喜怒哀楽すべてを表に出したような。
「その人の顔は覚えていないけど、彼女より年上で、彼女が大学を卒業したら結婚する約束をしていた―――と言っていた。その言葉が俺は、どうしても信じられなくて。彼女はチヅルちゃんみたいに、嘘がつける人じゃなかったし、ついたとしても、すぐに顔に出てしまう人でもあったし、器用な人じゃなかった。でも、その彼氏の中でも、彼女のご家族の中でも、彼女と俺の関係は生徒と先生で納まり切れるもので、それ以下でも、それ以上でもないように映っていた。祭りに行っていたのも、姉と一緒に行く約束をして、それに俺がついていったっていう軽い感じに思われてたし。姉はたまたまそのとき、会ってただけだったんだけどさ」