製菓男子。
ツバサは昨日リコをかばって階段から落ちた。
そのときどんな格好で落ちたのかわからないが、鎖骨を折っている。
全治十ヶ月の怪我だそうだ。
幸いなことにそれ以外には、目立った外傷はない。


鎖骨骨折は保存療法で手術なしのギブス固定で治るケースが多いようだ。
しかしツバサの場合は骨が小さく割れていて自然治癒が難しく手術をする。
バラバラになった骨を鋼線で串刺しにするらしい。
その後一・二週間くらい入院し、あとは通院でいいそうだ。


「今夜から絶飲するって」


明日の一時半から手術なのだそうだ。
それを聞いた藤波さんが「ごめんなさい」と謝る。


「どうして?」
「わたしのせいだから」 
「ツバサが選んだことだから、筋違い」


藤波さんは“自分の手に触れた人の少し先の未来を見る”体質を持っているらしい。
ただ月曜日だけはその体質に“不幸が見える”ことが加わるようだった。
そしてその“不幸”は、自分が引き寄せたものだと思い込んでいる。
そもそも幸せとか不幸せとか、それを決めるのは触られた本人だけだし、藤波さんが気に病むことではないのに。
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