製菓男子。

「いつまでそうしてるの？」
「あっ、ごめんなさい」


慌てて視線をそらすと、宮崎さんは「違う」と言う。


「違う？」


なにが違うのか、さっぱりわからない。
日本語を喋っているのはわかるのだけれど、これだと母国語を覚えたての幼児と変わらないような気がしてくる。


「手」


宮崎さんはぐいと、わたしの二の腕あたりを掴んで、自分に引き寄せる。
わたしは塩谷さんの手に掴まれたままだったと、今頃気づいた。


「店の前で、なに恥ずかしいことやってんの？」


そこにタイミングがいいのかわるいのか、不機嫌顔の荒川さんが現れる。
宮崎さんの手がぱっと離れた。


（今日もいっぱい泣いちゃったし、メイクも適当だから、絶対に怒られる！）