製菓男子。
「そういやーさ、ミツキの店にも現れる? 土曜日のロリータ」
「土曜日のロリータ? なんだそれ」
「言葉のまんまだよ。土曜日だけに現れる、ロリータ服を着た女の子。田舎町でその姿だから、結構目立つらしい」
「見たことないの?」
「巷のうわさってヤツ? なんかさ、その子がめちゃくちゃかわいいらしい。ここの通りに出没するって、うちのお客さんが何人も言っててさ」


うちの製菓店は県道沿いに立っていて、隣は楽器屋と写真屋で、道向こうは酒造、そこそこ店が連なるように建っている。
一応バスも通るメイン通りだけれど、郊外に大型店舗ができてから空洞化するばかりでシャッター街になりつつある。


「―――その人なら」
「妹、見たことあるんだ」
「見たことがある、というより、うちの常連さん、ですよね?」


言われてみてだけれど、確かに毎週土曜日に来ているかもしれない。
塩谷さんも頷いている。


「あたっているとしたら、とっても素敵な人ですよ」
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