姫はワケあり黒猫様





「茶髪のあいつは尾崎 雷人という。




あいつの名は自分で決めた。」





意味がわからず首を傾げると煉は呆れたように溜め息を吐いた。




「あいつは生まれた時にはすでに親は居なく、物心がついたころには何もない山奥に捨てられた。」






その事実に息を呑んだ。





あまりに酷い、その話に。




「幸い、その山は俺ん家の敷地で管理人が回っていた。




その管理人が連れて来たのが雷人。





その頃には名前はまだ無かったな……





尾崎は、その管理人の子に恵まれない弟夫婦の性だった。



今は雷人も自分で名を決め、尾崎で生きてる。







……だが、心は凍って溶けない。



感情が欠落していて、人間として生きていないんだ」







一瞬、悲しそうな瞳をした煉は煙草をもみ消して天井を見上げた。







「亮太郎もだ。




亮太郎は生みの親が腹に入ってた頃から薬中だった。




生まれても出生届は出されず戸籍も無かった。



それに、生まれてからずっとあいつは親に薬を打たれてた。





そりゃぁ、ラリるだろうよ。




狂って狂って………何度も命を絶とうとした。」






聞いてるこっちが苦しくなるような話が耳に流れ込んできて拳をぎゅっと握る。




「でも、5歳か……そんな頃に親が捕まって、相当な量を打たれてた亮太郎も薬抜く為に病院に入った。





その後完治したのは中1。




そりゃぁ、噂も広がって蔑まれて生きてきた。」







煉は目を閉じて硬く握った拳を額に置いた。






「………メンバーも、そんな重すぎる過去をもってる奴等が集まったから少ない。




ちなみに、お前の1番手前に居た奴は誘拐されて死にかけてる」





涙と汗がじわりと浮かんできて必死に止めようと拳を握った。









< 165 / 297 >

この作品をシェア

pagetop