あなたが教えてくれた世界
「……馬鹿な愚民、ですか……」
心から馬鹿にするような目をしているエリウスに、少しの恐怖すら感じながら、リリアスはそれを反芻した。
「……しかし、民衆は戦による増税や徴兵で困窮しているのもまた事実です。休戦を騒ぎ立てるのもわかりますわ」
どうしても黙っていられずにそう言うと、エリウスの蔑んだ瞳が彼女の方に向けられた。
「……ああ、貴方はあの愚かしい皇王様の血を分けた娘なのでしたね。忘れておりました」
「……エリウス様、貴方は、シドニゥス公爵と同じ考えをお持ちのようですね」
戦について議論していても埒があかないと判断した彼女は、それよりも今の彼女の事態に関係があると思われることを問いかけてみる。
が、シドニゥス公爵の名前を出した途端、彼の整った眉はさらに歪められた。
「……ああ、シドニゥス公爵殿ですか。確かに私は、彼から見たら仲間なのでしょうね。まあ使い勝手の良い駒とでも思っているのでしょう」
「……公爵の仲間ではないの?」
思わず聞き返してしまう。戦争擁護派で、お父様への最大の反逆分子としては、彼が最有力だったのだけれど。
「……笑わせないで頂きたい皇女様。私があの男を利用していたのです。現にこうして、貴方が留学するにあたって宿を探しているという情報を得られた。父上に代わってベリリーヴ侯爵家の威信を保っていて良かったと、あれほど思ったことはない」
(……どういうことなの?)
リリアスは、一度に沢山の情報が得られ過ぎて、それを処理しきれかねていた。
「いくつか聞きたいことはあるのだけれど……まず、貴方のお父様はどちらへ?」
「体調が優れず、シキュアンの山奥の療養所ですよ。……テラキビテの根というのは、致死量を与えずとも蓄積されていくようですね」