あなたが教えてくれた世界
彼は複雑な顔をした。
「……それってそっちが言うこと?」
そう言いながら立ち上がっている。苦しそうな声は気のせいだったのだろうかと彼女は思った。
それから彼女自身も立ち上がったが、
「……痛っ」
思わず声をあげてしゃがみこむ。
体重をかけた瞬間、右足に鋭い痛みが走ったのだ。
「どうした?」
男がそう言ってくるので、一瞬迷ってから彼女は右足を見せてみた。
「立った瞬間痛くなって……。さっきまでなかったんですけど……」
騎士の男はしばらく考えてから言った。
「多分、軽い捻挫だな」
男はそう言うと立ち上がった。
彼女も男につられて立ったが、やはり足は痛む。
「歩けそうか?」
彼女が痛みのために右足に体重をかけていないのを見て、男は言った。
「大丈夫です。歩けます」
そう言って、証明するために一歩踏み出したが、
(いたっ……)
どう我慢しようともやはり痛かった。
「無理だな」
それを見て、男がきっぱりと言う。
「はい……」
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