bloody mary

(若い、若い。)


不満そうに唇をひん曲げる優男に、オヤジは苦笑した。

人を見た目で判断し、まるっと理解した気になってるなんて、人生経験が浅すぎる。

確かにパっと見あの男は、事務所や賭場で目にするような、所謂ソッチ系ではなかった。

コンビニやネカフェなど、ドコにでもいるような男だった。
(ナニゲに正解。)

だが…


「携帯は簡単に壊せるよな。
おまえでも。」


犠牲になった床の元・携帯に視線を落としながら、オヤジは優男に訊ねた。


「は? そりゃ…
もったいねーケド。」


「でも、人は簡単に殺せねぇよな?」


「はぁぁ? 簡単にって…
当たり前じゃねーっスか。」


「そーだ。 当たり前だ。
人を殺るってのは、相当の覚悟が必要だ。
断末魔なんて上げられた日にゃ夢でうなされる夜も続く。
頭でもイカれてなきゃ、簡単にゃできねぇよ。
でもさー…」


オヤジが言葉を切り、吐き出したタバコの煙で輪を作る。

今まで拝んだことのないオヤジの別の顔を垣間見て、気圧された優男が大人しく席に着いた。

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