bloody mary
震えが止まった華奢な身体から完全に力が抜けた。
気を失ったのだろう。
「…よくやった。」
マリーは菜々の頬を伝う涙を、指でそっと拭った。
やりきれない切なさを感じる。
愛しさが胸を締めつける。
あぁ、もう!
いったい、なんてコトしてくれちゃってンの…
壊れ物を扱うように菜々を抱いて立ち上がったマリーは、かなり遠くに殴り飛ばした父親に鋭い視線を向けた。
地面に倒れ伏した父親は、口から血と折れた奥歯を吐き出している。
「カ‥‥‥ハっ テメェ…
暴力事件だ!! 誘拐だ!!
そりゃ、俺の娘だゾ?!
ケーサツ行ってやる!!!」
えー…? 暴力事件て…
オメェが言うか?
腫れた顔を押さえ、異様にギラつく目で睨んでくる父親に、マリーは菜々を抱えたまま大股で歩み寄った。
「行けば?
…行けるモンなら、な。」
ガっっっ!
「グハぁぁぁっ」
表情もなく父親を見下ろし、言葉と共に彼の腹を蹴り上げる。
ソレがサッカーボールであるかのように。