bloody mary

『連絡を断ってごめんなさい』
と、彼女は言った。
『怖かっただけ』
と、彼女は言った。

『今でも愛してる』
と、彼女は言った。

数年ぶりに見る彼女は、あの頃と変わらず美しかった。
潤んだ瞳も、濡れた唇も、俺が愛したままの彼女だった。

だけど、俺は言った。
『もう終わったコトだから』
と。

彼女は悲しい顔をした。
せめて連絡先を教えてほしいとせがんだ。

でも最後には、時が経ちすぎたことをわかってくれた。

俺たちは握手をして。
互いの未来を祝福しあって。

別れた。

なのに…

彼女は今、俺を見下ろしている。

再会から数週間後の今日、また俺のままコンビニに走って。
後頭部に衝撃を感じて。
意識を失って。

ビルの一室と思われる部屋で、結束バンドで両手を拘束されて意識を取り戻した俺を、見下ろしている。


「ごめんなさいね?
安藤くん。」


彼女は艶やかに笑った。


「驚かせてしまった?
でも、すぐに終わるから。」


驚いてないよ。
ほんとは、わかってた。

俺も薄く微笑んだ。

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