bloody mary
菜々は溜め息を吐きながらイヤホンを取った。
「お役に立てずに、ごめんなさい。
今はコレが限界です。」
「いや。
おまえは天才だ。
今度、スカ○ター作って。」
マリーもイヤホンを取り、項垂れる菜々の頭をクシャクシャに撫でた。
会話があんなに弾むのは、女と二人だからだ。
自分を拉致した男たちがソコにいれば、お喋りを楽しむ気分にはなれないだろう。
見張りがついているとしても、部屋の外に違いない。
プランは決まった。
二階に集まっているであろう野郎共を死体に変えて。
驚いて下りてきた見張りを死体に変えて。
悠々とアンジーをお持ち帰り。
マリーはコートのポケットから革の手袋を取り出し、片方を口にくわえた。
まず、右手。
それから、左手にはめる。
両手を数回軽く握り、ルーズウェーブの髪を掻き上げる。
サングラスを外して現れたのは‥‥‥
黒いトレンチコート。
黒い革手袋。
黒い髪。
そして、月の光すら吸収してしまうブラックホールのような、底知れぬ黒い瞳。
死神だ。
『ブラッディマリー』だ。