bloody mary
「わかった! ガキは連れてけ!
金は俺のモンだ!!」
『はした金』
自分でそう言っておきながら。
その上に這いつくばる浅ましい姿を、マリーは蔑んだ目で見下ろした。
どちらにせよ住人には、憐れな子供の処遇についての選択権はなかった。
彼が選べたのは、素直に金を受け取って生き残るか、くだらない人生を終わらせるか…
「命拾いしたな。」
ポツリと呟いたマリーは身を屈め、住人の襟首を掴んで引き寄せた。
至近距離で濁った目を見つめ、優しいとも言える低く穏やかな声音で囁く。
「もうこのガキは俺のモンだ。
近寄れば、ソッコー殺す。」
大事そうに子供を両腕に抱えて部屋を出ていくマリーを、住人は固まったまま見送った。
まだ震えが止まらない。
もう男は去ったというのに。
金は手元に残ったというのに。
あの男は威圧的な態度を取らなかった。
拳を振るうこともなかった。
なのに、震えが止まらない。
あの目…
狂犬? 獣? 肉食恐竜って、あんなカンジだったのかも…
見つめられた時、死神の鎌が首にかかったのを確かに感じた。
サンドバッグになるしか能がないガキと、あんなヤバそうな男に、どんな接点が…