bloody mary

「『私なんか』じゃねーよ。
おまえだから、似合ってる。」


菜々が涙で潤んだ目を上げた。


「その服も、その髪も。
さっきの店だってナイフの使い方さえ覚えりゃ、おまえにお似合いだ。
俺は、そー思う。
後はおまえが決めるコトだ。」


マリーは一度言葉を切った。

鏡の中で視線が絡み合う。

サングラスで幾分軽減されてはいるが、マリーの眼差しは菜々を射抜くかのように鋭い。

よく似合っているよ。
本当に可愛いよ。

だから…
自分の口で言ってみろ。


「ソレが欲しいか?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥デス…」


「聞こえねぇよ。」


見開いた菜々の目から、とうとう大粒の涙が零れ落ちた。

ワンピースを握った拳を震わせて。
桜色の唇を強く噛みしめて。
白く滑らかな頬を涙に濡らして。

だがもう菜々は俯かなかった。

鏡の中のマリーを見つめたまま掠れた声を精一杯絞り出した。


「ほ…しい‥‥で…すっ」


ハイ、よく頑張りマシタ。

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