月灯りに照らされて
side 薫

年末に向けて、政局が慌ただしくなり、結局12月に選挙になった。

俺は、自分の選挙運動より、地方への応援要請がたくさんあり、
その合間に、自分の選挙区を回り、正直、選挙運動期間中盤で
体力・気力・共に限界に来ていた。

それは俺だけではなく、翼や一樹も限界だった。

お陰で、一樹たちと言い争いになってしまったし・・・。

事務所のおばちゃん達も、今回、翠がいないことにショックを受けており
やはり、お嬢様の麗華では、選挙事務所を切り盛りするには、無理が
あるようだ。俺達がいない事務所は、川崎さんに任せて、俺達は
地方応援に、明日からまた出かけることになっていた。

今日の仕事を終え、明日の打ち合わせをしてから、家に帰ると
麗華が、泣きながら

「私って、役に立ってないのでしょうか?」と、涙ながらに聞いてきた。

人が疲れているのに、そんな事を聞いて来るなんて・・・・勘弁してくれ!
本気で、怒鳴りそうになった・・・。翠なら、絶対にそんな事は言わない。
俺は、苛立つ気持ちを抑えながら、

「麗華、初めての人は皆そうなんだから、気にしないで
 出来る事を、しっかりやってくれればいいから。さぁーもう寝なさい」

すると、麗華は、笑顔になって

「薫さん、ありがとう。麗華、頑張って見せるわね!」

本当に、殴ってやりたい衝動に駆られた・・・・。

俺は、疲れ切って、頭の中は、『離婚』の文字が浮かび始めていた。
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