月灯りに照らされて
席に案内し、最後の人物に目を向けると、思わず、息を飲んだ。

「あれ、君、昨日の、小鳥遊 翠ちゃん、だよね!」

薫は、店に入って来た時には、翠の存在を認識していたがわざとらしく
翠に声をかけた。

当の翠は、『ゲェッ、昨日の橘 薫だ! 最悪!』 折角テンションが上がって
いたのが、急降下しながら

「昨日は、どうも・・・。どうぞお席に・・・。」と、彼を席に促した。

「えっ、翠ちゃん、薫と知り合いなの?」と、話しかけてきたのは、

工藤さんこと、工藤 翼さん。この店の常連さんで、家族ぐるみで
利用してくれてる・・・。

「はい、昨夜、ちょっと・・・・。」さり気無く返答を濁す翠。

そんな翠の様子を気にすることなく、翼に

「もしかして、翼が言っていた子って、この子か?」

「う・うん。綺麗な子だろ! 翠ちゃん、今日の料理は、何?」

と、翼さんに聞かれ、返答しながら、なるべく薫の方を見ないように
していた。

そして飲み物の注文を聴き、厨房へ行くと、オーナーが、「翼君、来たね!」

と、聞かれ、「はい、いらっしゃいました」と、答え、その後は、

薫から話しかけられることもなく、翠はいつも通りに仕事をした。
< 15 / 209 >

この作品をシェア

pagetop