【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
丸いテーブルの家族席から、あたしはお兄ちゃんを見つめた。


どうして家族席は一番遠いんだろう?

ここからじゃ、お兄ちゃんの姿は小さくしか見えない。


だけど、遠くて良かったのかも。


だって、お兄ちゃんの傍にいたら……

あたし、きっと泣いちゃうから。



お兄ちゃん、知らないでしょ?


あたし、ね。

あたし、お兄ちゃんのこと、好きなんだよ。


昔から、ずーっと、ずーっと。

大好きだったの。


知らなかったでしょ?

気が付かなかったでしょ?



だって、あたし。

一生懸命、隠してたから。


気持ち溢れないように、抑えてたから。

いつも、胸の奥に押し込めてたから。



なのに、お兄ちゃんは……

あたしのそんな思いなんか、知らないで。


いっぱい、あたしに優しくして。


いっぱい、あたしの気持ち、大きくしていったよね……?

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