みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


「あと、冷たい眼で見ないで下さい」

「今後は視姦しかしないつもり」

「それは華麗にシカトします。あと、他の女性に手を出す時は、予めっ」


――予め報告した上で、行動に移して下さい。

紡ぎかけた唇は、強引に私の顔を引き上げてキスした男に封じられてしまう。


やたらとリップノイズを響かせ、唇を弄ぶような触れ合いは暫く続く。


水音と透明な液体で唇を濡らしながら、腫れた感覚だけを残して離れた唇。


自身の口を拭うと、非難めいた視線を送る私の頭をポンポンと優しく叩いた。



「1年も禁欲生活送れるくらい“朱祢中毒”の男に言うセリフじゃないよね」

「わ、私は絶倫すぎても困りますが!」

「それは“適宜”満たされれば解消するって」

「……その笑い方と発言、余計に不気味ですよ」


「そりゃあ朱祢といると楽しくて仕方ないし、もうソッチも諦めたら?
――やっぱり俺らはこのスタイルで一緒に生きるのがベストだって」

「……そうみたいですね」

広々としたリビングのソファで淡々と続く攻防は、尖りのない穏やかなもの。



幾つになっても、どこまでも強情で。すこぶる不器用なのに、口達者なところは相も変わらず。


それでも変わらない確かなものが此処にある。だから、私たちのペースで進んでいきたいと思う。


ようやく果たした再会は、始まりのシグナルに過ぎない。――ここが本当のスタートだから。



欲望と嘘に包まれた男女の時間は、愛しさで満ちた甘い逢瀬の時へと変化を遂げた……。



 #【8】 哀願の行方★終



朱祢さんと叶さんのその後のSSでした。

彼ららしい距離間もすぐに埋まるのでしょうね。(彼の力ずくで。笑)


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