夜桜と朧月
「……今はまだ全然無理だけど」

不意に真面目な口調で語られる言葉に、後ろ向きのまま耳を傾ける。

「あいつの一周忌が終わったら、……一緒に、住んでくれないか……?」

ん?それって……。

プロポーズ!?


「指輪は、俺は別に無くても良いけど、お前がペアで付けたいなら一緒のを買うし。けど、あいつの事は、せめて一周忌までは……心配してやりたいから」

お姉ちゃんの旅が、心配なんだね。

向こうの世界で困ってないか、苦しんでいないか……――――。

「いいよ、待つよ。私だって、お姉ちゃんの事が心配なんだから。でも、一周忌の後には、咲希と多希の一歳のお誕生会を、お姉ちゃんの前でやったげたいね」

薫は何も言わず、私の胸に顔を埋めた。



薫が、静かに、泣いている。


男の人の涙が、こんなに綺麗だと思ったのは、初めてだった………。







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