夜桜と朧月
「病気に罹って泣いてる訳じゃないんだ?」
「うん。一時的なものみたいだから、気にしないのがいいみたい」



言いながら立ち上がり、キッチンから蟹バサミを持ってきて薫に渡した。



「さんきゅ」



自然にハサミを渡した私と、受け取った薫を、あんぐりと口を開けた父がまじまじと見つめている……。

何か変な事、した?


「お父さん?どうかした?」


怪訝に思い父の顔を伺うと、ハァ、と溜め息をつかれた。


「薫君になら、真愛も安心してやれるのになぁ……。浮気をするような男なら、やめとけ、真愛!アイツは駄目だ。許さん!!」




ちょっ…と待って!!お父さん、何の事言ってんの!?



「楓とか言う奴、アイツは駄目だ!!真愛がいない間にしょっちゅう押し掛けてきて、自分で浮気を認めたじゃないか!あんな奴は結婚してもまた浮気を繰り返すんだぞ!」

「ちょっと待って、お父さん!楓、うちでどこまで話した訳!?」

「浮気してても、お前と別れたくないとかほざきやがって。とにかく許さん!」

「楓とはもう終わってるから!!」




悲鳴に近い私の声は、何軒先まで聞こえた事やら。



………爆弾を落とした張本人の父は、ひっくり返って寝てしまったけど………。



この後の気まずさをどうすれば良いの!?
< 48 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop