夜桜と朧月
薫が、お見合い……?


「……っざけた事言ってんじゃねぇよ!!」

キレた薫が立ち上がってアルバムを投げ返した。


「薫!?だって真愛ちゃんにだって、いつまでも甘えるわけには……」

「相手なんか手前ぇで決めるってんだよ。大体なんであいつが死んでまだ一年も経ってねーのに、そんな話持ってくるんだよ!?けったくそ悪ぃ」


行き場のない怒りをぶつけるかのように、床を思いきり撲る。


咲希がビクッとして、大きな声で泣き出した。


慌てて駆け寄り、抱っこして咲希をあやす。


小さな子供は大人の不穏な空気を敏感に察知して、言葉にできない感情を体全体で伝える。



咲希はきっと、大好きなパパが大声で怒鳴ってるのが嫌なのに。


そのうち多希にもそれは感染して、とうとう二人とも泣き出してしまった。



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