夜桜と朧月
Dear

輝石

「なに、また見てんの?」

「あんまり嬉しいから」



左手の薬指に填められた『それ』を、暇があれば見詰めて、ゆるりと撫でる。

もう、それは無意識の行動に近かった。



薫は呆れたように笑う。



「ダイヤって何月の誕生石だっけ?」

「4月だよ、い、ち、お、う」


一応、に力を込めて返事をした。だって私の誕生石だもんね。


「一応って何、一応って」


不思議そうに私を見ながら新聞紙を広げた薫。


「私の誕生石。私、4月が誕生日だよ」

「は……?」


さては、その顔。私の誕生日、知らなかったな?


「4月21日。今年は日曜日だなぁ。どっか行きたいなぁ」

「は?え?マジで?マジで……今月!?」



薫は慌てた様子でカレンダーを見た。


指輪を貰ってこんなに幸せなんだから、もうこれ以上は、本当に何も要らない。

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