おうちにかえろう
「玄関も広い!!」
こいつの声は、本当によく通る。
今のは、褒めたわけじゃなくて、100パーセント嫌味だ。
何で玄関を見られただけでこんなにげんなりした気分にならないといけないんだ。
と、いうか…
「…。…え、何、上がんの?」
「そのつもりだけど何か?」
そんな、腕を組みながらキリっとした視線を向けられても、俺の気持ちは変わらない。
「うるさいから帰ってくんない」
「ほんと失礼だよねあんた!!!」
「だってさっきからそんな声張って…何か怒ってるし…ってそれはいつもか」
「ほんと失礼だよねあんた!!!!!」
また、口をぐわっと開けて怒鳴ってきたものだから、溜息をついてしまった。
だから怖いんだって、その顔。
そう言う前に、今度は賀上が大きな溜息をついた。
「………美月が住む所だもん、ちゃんと見させてよ!………もう、うるさくしないし……」
語尾がモゴモゴして聞き取りづらかったのは、唇が尖っているからだろうか。
バツが悪そうに視線を泳がせている賀上を、思わずじーっと見つめてしまった。
もう煩くしないし…ってことは、煩くしてる自覚はあったのか?
「…最低だなお前…」
「何でいきなり最低呼ばわり!?!?」
心外、とでも言いたそうな顔をしているけれど、結局のところどっちなんだろう。
…ま、何でもいいけど。