おうちにかえろう




雨宮家で生活をし始めて、数日が経ったころ。



目まぐるしい日々についていくのが必死だったせいで忘れてしまっていたことを、漸く思い出せた。



私は、ここにタダで住むわけではないのだ。



下宿させてもらうわけだから、当然お金を払わないといけないのだ。



そんな当然のことをどうして忘れていたのか、思い出した瞬間には血の気がざっと引いた。



そして、夜11時過ぎに疲れて帰ってきた雨宮さんを待ち伏せして、聞いたのだ。




「家賃はいくらですか」



と。



そして、返ってきた答えは衝撃の“3万円”



…私がこの間まで住んでいたマンションは、月7万5千円だった。



プラス高熱費に食費に…とかかっていたのに、ここはそれも全て込みで、3万円。



……。



…まじですか?





「だから、近所のスーパーのタイムセールには手分けして積極的に行ったりするわけよ。とにかく、うちは節約節約でやっていってるから、ちゃんと協力してネ」


「はぁ…それはもちろん協力させてもらいますが…あんな美味しいご飯を出してもらえて、月3万て…」


「料理はいい材料使えばいいってもんじゃねぇ。ごちそうになるか残飯になるかは作るヤツの腕次第だ」




キリっとした顔でそんなこと言われても…雨宮さん…






「ちなみに昨日は俺がタイムセール行ってきたよ!豚の細切れ肉100グラム68円!ニンジン玉ねぎピーマン袋詰め放題100円!卵78円!」


「その前は私が…牛乳115円、もやし3袋50円、小松菜29円…」


「安い…」




のかどうか、普段スーパー等に行かない私にはよく分からないが、きっとものすごく安いんだろう。


入間さんなんて、ソファーから身を乗り出して目を輝かせている。



ただごとじゃないことは確かだ。






「とにかく、こんな感じで全部協力してやってってるわけよ。…っつーわけで、美月ちゃんもちょっとずつ慣れてきたでしょ?」




にんまりと、何やら怪しい笑みを浮かべられて、思わず椅子ごと後ずさってしまった。


雨宮さんの笑顔が、何やら黒い。






「そろそろ参戦してもらおうか」




バン、と音を立ててテーブルの上に置かれたのは、お風呂に入っていたはずの雨宮くんの手と、…紙。



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