おうちにかえろう
とにかく言えることは、彼のおかげで、私の命は繋がれた。
そのことで喜んでくれるのなんて、まーちゃんだけだと思うけど。
「は!?倒れた!?」
「うん、で、見ず知らずの黒髪の神様にご飯を恵んでもらった」
「黒髪の神様!?意味分かんないんだけど!!」
机にバン!!と豪快な音を立てて手をついたまーちゃんを見て、そりゃそうだ、と妙に納得してしまった。
「何そのありえない展開!!」
親友のまーちゃん。
本名、賀上真琴(かがみまこと)。
中学から一緒の私の親友。
人から敬遠されるばかりだった私に歩み寄ってくれた、たった一人の大切な友達だ。
「もー!だから心配だったんだよ一人暮らしなんて!絶対何か起こるって思ったし!」
「いけると思ったんだけどな…2日間食わずっていうのは意外にしんどかった。生で食べれるものもっと常備しとかないと駄目だな…」
「今度からどうにもならないときは連絡よこすこと!!分かった!?」
「…すみません」
まーちゃんがキレている。
顔を見れば分かる。
まーちゃんは、いつもそう。
仲良くなってから、自分のことのように私を心配してくれる。
話さなくても、気付いて、寄りそってくれる。
甘ったれの私を甘やかしてくれる、本当に優しい人。
大好き。
「あーもう…やめてよ?…やだよ?そいえば一週間連絡取れてないと思って様子見に行ったら死んでるとか…どんなトラウマだよ…」
「…ないとは言い切れない」
「威張る意味!!!」
また、机を思い切り叩かれて、怒られてしまった。
だけど、これも私のことを本気で心配してくれてるからであって。
そのことがただ、くすぐったい。
「遠慮しないで頼ることっていつも言ってるでしょ!?また遠慮した!」
私を心配して怒ってくれる人なんて、いなかったから。
くすぐったいけれど、嬉しすぎる。
どうしていいのか分からなくなるくらいに。
「うん、ごめん、次から遠慮しない」
「頼むよほんとにもー!」
「ごめん」
嬉しくて、まーちゃんの優しさが伝わってくればくるほど、頼れなくなる。
多分、私のことなのに、私以上に悩んでくれること、分かってるから。