おうちにかえろう

どうってことない





とりあえず、長居するわけにはいかないし、一度家に帰らなければいけないこともあって、話もそこそこにバイト先の特別優遇券を置いて、お暇させてもらった。


最後まで、皆さんの珍しいものを見るような視線が痛かった。


無理もない。


完全にアウェイだったから。


貴重な朝の時間を潰してしまって申し訳ないことをしてしまったな。





『にゃんにゃんカフェ…?』


『全身全霊を込めてサービスさせていただきます。ぜひお越しください』


『サービスって何の…』


『私、週6でいますので。土日祝日は必ずいます』


『聞けよ俺の話』




それにしても、黒髪さんの眼差しが痛かった。


確かに、にゃんにゃんカフェってあからさまに怪しいし、仕方がない。


来てもらえればご想像と違うことが分かるんだけど…


まぁ、何も恩返しが出来ないなんて絶対に嫌だし、お店に来てくれないのならまた別の作戦を練り直してお礼に窺おう。





「―――…」




―――それにしても。





『…、ここに書いてある“美月”って…』


『ああ、私の名前です。申し遅れました、私、檜山美月(ひやまみつき)と申します』


『…、ふーん…』




…お知り合いに、同姓同名の方でも居たのだろうか。


私の名前を知ったときの黒髪さんの反応が、少しおかしかった気がする。


まぁ、私にはその理由を尋ねる権利なんてないし、例えば同姓同名の人がいたって、別に驚かない。


だから、特に掘り下げることもなく、失礼してしまった。


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