奪取―[Berry's版]
「相変わらず、元気にやっているよ。絹江さんは随分髪を短くしたんだね」
「学生時代は束ねていることが多かったものね。でも、最近ではずっとショートなの。襟足がさっぱりして楽だから。似合わない?」

 首元に手を置いて、絹江は喜多の視線から眸を逸らした。楽しげに、眸を細めた喜多は首を振る。

「絹江さんは顔が小さいから、ショートも似合ってる。項も色っぽいよ。……相変わらず、着物三昧の毎日?」
「そう。見ての通り、一年のほとんどは着物生活。ありがたい事に、着物に関わる仕事にも就けて、なんとか生計も立てているのよ。今ではたまに洋服を着ると、首周りが屈しく感じちゃって」

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