奪取―[Berry's版]
 絹江は、大学在学中に多くの呉服屋や織屋巡りをした。絹江に、着物の魅力を教えてくれた友人と一緒であったり、ひとりであったり。それこそお金の許す限り、全国を回ったものだ。一見お断りと敷居の高い呉服屋もあったが、そんなところばかりでもない。若い人が興味を持ってくれるのならばと、商品を広げ、直接触れさせ、丁寧な説明をしてくれる店も少なくなかった。
 そんな巡り合わせの中で、絹江は喜多の父親を知るきっかけを掴むこととなる。

 喜多の父親は、着物や帯に描かれる図を考案する仕事に携わっていた。喜多の父親の絵を原案に、織りの図案が起こされ、その図案を基に織り師が反物を織り上げる。絹江の友人が目指していた染めの絵描きと、織物の図案。同じ着物を作る反物であるはずなのだが、その違いにも。絹江は興味を惹かれた。
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